祖母が旅立ちました

祖母が旅立ちました

 2020/9/16の夕方、98歳になったばかりの祖母が旅立ちました。両親に見守られ、最後の息を引き取る時も一緒に過ごすことができました。コロナの影響で特別養護老人ホームに入っていた祖母には会えず、容体が悪化して入院してからも、私たちは会うことは許されなかったけれど、彼女の人生において一番長い時間を過ごした両親とともに最期の時間を過ごせたことは、あらゆる意味で幸せな最期だったと思います。

 今年の6月に人形供養に出したひな人形は、祖母から私へのプレゼントでした。不思議なご縁ですが、その雛人形は9/17にお焚き上げしていただいたそうです。祖母と共に、祖母から贈られたひな人形も天に昇ったのだと思うと、言い表しようのない気持ちになりました。

 お葬式も、コロナの影響を考えて遠方の方々には出席を控えていただき、近場の親族だけの小さい式になりましたが、おかげでちょっと泣けて、ちょっと笑える、よい家族葬で送り出すことができたと思います。

 私自身、最後の最後に素敵なプレゼントをもらったような気持ちになりました。ありがとう、おばあちゃん。そして両親、本当にお疲れさまでした。

祖母と私、私と祖母

 私は決しておばあちゃんっ子ではないけれど、今回いろいろあったけれど、でもこれで良かったんだ。ありがとう、おばあちゃんと言えるのは、祖母が変わらずにいてくれたからと、私自身がいろんな意味で成長したからだと思います。

 数年前まで、私は祖母に対して良い感情を持っていませんでした。祖母に拒絶されている、嫌われているとさえ思っていました。

 しかしね、それは私の「おばあちゃんとはこうあってほしい」という押し付け(願い)が見せた幻想であって、私が祖母を拒絶していたんだと気が付きました。

 それから、祖母を激動の時代を生きた一人の女性として考えるようになり、かなり考え方が変わりました。祖母は私の理想とする「おばあちゃん」とは違いました。けれど、まぎれもなく私の「おばあちゃん」です。気が強く、はっきりものを言う女性。それが祖母です。

 こうした思い違いに気づいてから、一度祖母に会いにゆきました。それが去年の夏。これが最後になりましたが、精一杯のことができたからか、悔いは全く残っていません。

人はたくさんの愛という根っこに支えられている

 祖母のお通夜とお葬式の際、叔父がアルバムを持ってきました。叔父はカメラが趣味なので、家族の写真もよく撮ってくれていました。特に親戚が集まった場では毎回、集合写真も撮っていました。物心ついてからは「面倒くさいなあ」と思っていたけれど、今になってすごくありがたいことだったなあと思います。

 そうした一枚から、とても良い笑顔の、最も祖母らしい良い写真が遺影となりました。

 叔父が持ってきたアルバムの家族の写真の中には、おそらく1960年代くらいからの写真がありました。父が中学の頃に他界した私の曾祖母が元気だったころの写真や、小学生の父などです。

 それを見て思いました。ここに写っている人たち全員を、私は知っている。この時代に私はいないけれど、約20年後に生まれて、ここに写っている人たちみんなに祝福され、可愛がられてきたんだと、雷に打たれたように突然実感しました。

 この人たちがいて、実に実に、さまざまな出来事があり、そのひとつひとつを私の先祖となる人や、若い両親たちが頑張って切り抜けたり支え合ったりして、今があるんだと身体で知りました。

 その感覚は生まれる前からの過去と現在が全部インストールされて「理解できた」ような衝撃と感動でした。

 たくさんの人たちが関わり合って織りなす大きな時間の渦、出来事の渦、あらゆる感情の渦が、人間一人ひとりにあるんだと思ったら、途方もなさ過ぎてくらくらしました。でも、「生きる」ってそういうことなんだな、と体で理解した貴重な体験でした。

 私の親族の中には、当然嫌いな人もいるし、二度と会いたくない人もいます(すでに他界しているので会うことはないのだけど)。良い人ばかりとは言い難いです。でも、一人でも欠けたら今は存在しない。そう思うと、私があの人を好きとか嫌いとかどっちでもいいなと、ただただ「ありがとう」の気持ちだけがわき起こりました

 2020年、秋のお彼岸。私は祖母からの大きなプレゼントを受け取り、じっくりと自分の礎と向き合うことができました。おばあちゃん、ありがとう。また会いましょう。


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